正直、相性がいいんだか悪いんだか測り兼ねる。
職場の後輩からの紹介で、彼女とは付き合いだした。
容姿も申し分ないし、仕事も有能だ。
しかし、だ。
どうにもしっくりこない。
そんな先日、元カノからのメールの着信があった。
「久しぶり!元気?お茶でもしよ~よ~」。
相変わらずバカっぽい。
数日間放置していると、またメールがきた。
「彼女いるって聞いたよ~。
でも友だちじゃん!元カノとちょっとお茶しよぉお!それぐらいいじゃん」。
やはりバカだ。
だからこいつじゃダメなんだ。
そう思いつつも、不思議と心が和んでいる自分に気づいた。
そればかりか、腕に腕をからませてくる、あの後半はうっとおしくなった仕草すら懐かしい。
「夏はそれ、やめようよ。
熱いじゃん」。
そう言うと、彼女はかえってじゃれついて頭を擦り寄せてきた。
ツヤツヤのおかっぱ頭に天使の輪が光る。
そりゃ今の彼女だって、天使の輪は光っている。
けれど、猫や犬にも種類?系統?があるように、人間にもタイプがある。
元カノが愛らしい雑種なら、今カノはさしずめペルシャ猫とか、とにかく血統書が付いている。
気高く、あくまでノーブル。
そんな雰囲気やプラクティカルな性格が、堅物の僕とは相性が合うと思ってもいた。
紹介してくれた後輩も、同様の理由からだ。
でも、時折彼女の顔に浮かぶ、冷ややかな表情が気になる。
それはホームレスの人を見たときだったり、競馬場に向かうおじさんだったり。
とにかく社会の「下層民」に向ける目線だ。
僕は母子家庭の出自を持っている。
母親はやり手だったから、貧しくはなかったが、それでもどこか「下層民」意識が根底に流れている。
だが皮肉にもおふくろは元カノを毛嫌いし、今カノがお気に入りなのだ。