背伸びの時期

中学1年のとき、ブラスバンド部に入部した。
最初の1ヶ月は「仮入部」と言われる期間で、自分には合わないと思ったら違う部活に入り直すことが簡単にできるときだった。
私はブラスバンドのオーボエという楽器を志望した。

同じく新一年生でオーボエ志望がいて、同じオーボエパートとして基礎練習を始めることになった。
その子は、劇団に入っているといっていた。
毎日のように女優になる夢を語っていて、稽古で習った内容の寸劇を披露していた。

ただ、周りの私たちは「主演女優のタイプじゃないね」と口々に言っていた。
映画の脇役として、良い味を出しそうなタイプではあるが、可愛いとか美人ということではなかった。
でも彼女は主演女優気取りだったのだが、中学一年にして二股、三股をかけて自慢していた。

これも寸劇の内容が続いているのかしら?と思うほど飛躍した内容だったが、楽しそうに自慢げに話してくるので「うん、うん」と聞いていた。
しばらく話しを聞いていると、「これはどう聞いても作り話なのでは?」という疑問がわき上がってきた。

中学1年生だった1999年は、性の目覚めの低年齢化が叫ばれていたころで、中学生なのに体の関係になることと引き換えに大人を自認するという痛い考え方が蔓延っていた。
女優気取りの彼女も同じように、ホテルの前で待ち合わせをして、取り巻き?と「デート」だと言っていた。

話しを聞いている私は、面倒くさい事に巻き込まれる前に、疑惑の目を向けられるような気がして、彼女と接するのを避けるようになった。
ほどなくして、親の転勤の都合で引越をしていったが、もっと都会に行ったので、さらに活発な交際の頻度が上がっているんではないかと心配したことを覚えている。