アルバイト代で見栄を張って居酒屋に行こうとしたのですが、私のアパートで安く済ませようとお姉さんは言ってくれたので、
ビールを大量に買い込んで部屋に向かいました。
この時から、目の前の髪の長く腰のセクシーな女性と関係を持てるのではないかとドキドキしていたの覚えています。
アパートについて缶ビールで乾杯。
話は自分の学校の愚痴やお姉さんの仕事の愚痴。
盛り上がるにつれ二人の距離は近くなりました。
私は拒否された時にどうしようかとも考えずに、彼女に唇を重ねました。
お姉さんは一言
「守ってくれる?」
そう口にすると身体を任せてくれました。
その夜は激しく、空が白く明るくなる頃まで身体を重ねていました。
それから僅かな睡眠を取った二人は食事をとって、解散しました。
別れ際の
「優しくしてくれてありがとうね」
その言葉は若い私を上機嫌にさせるものでした。
また会いたいと思いました。
また何度もこの不思議な所のあるお姉さんに会いたいと思いました。
ですが、この女性から連絡が来ることも連絡が帰ってくることもありませんでした。
そして半年後、彼女からメールが来ました。
「守ってくれる人、見つけた」
そうなのか。
そう思い。本当にこの女性に会うことは二度と無いのだろうと考えました。
私の胸には爽やかな不思議な余韻が残っていました。
介抱してくれた彼が私の冷えた身体を温め
20代の頃ある作家の小説に憧れて、主人公と恋人の出会いの場所へ旅したことがありました。
その作家の作品がきっかけで2輪の免許を取った私は、オートバイで一人旅に出たのです。
いくつかの作品の中でも一番好きな小説に登場する古い温泉街の共同浴場に行ってみると、混浴ではなく男女の浴槽がきちんと分けられていました。
小説の中ではたしか混浴で、主人公と恋人の出会いの場所なのです。
混浴に入る勇気がなかった私は、がっかりしたようなホッとしたような複雑な思いでした。
午前中に温泉街に着いたのですが、夜明け前に出発した私の身体はとても冷えていて、すぐにウェアを脱いで温泉に入りました。
ゆっくり湯船に浸かって冷えて疲れた身体を温めているうちに、少しうとうとしたようです。
のぼせそうになっている自分に気がついて慌ててお湯から出たのですが、着替えているうちに体調が悪くなりました。
外のベンチで休んでいると、ピックアップトラックが目の前に停まりました。
私の青い顔を見て心配したらしく、声をかけてくれた彼がバイクと私をキャンプ場まで運んでくれたのです。
彼もまた同じ小説に憧れて温泉に来て、旅の費用を稼ぐためにキャンプ場でアルバイトをしていたそうです。
お互いに連絡先を交換し、彼が日本一周の旅を終えたらデートをする予定です。